破綻したホロスコープ②【自分なりの考察】

西洋占星術に詳しい人は、初見でどういった解釈をしてこのホロスコープの持ち主を想像するのでしょうか。

私のように趣味でホロスコープを学んでいる者としては、最初に目が行くのは太陽と金星の合です。まさに愛し愛される為に生まれてきたような人だと思います。以下は私なりに解釈した、このホロスコープの持ち主の持って生まれた性格や人生傾向です。

※出生時間は推定です。なお冥王星と土星の合、天王星と木星の合は世代アスペクトであり、この年の金星の逆行は、8月4日午前4時51分乙女座10度から9月16日午前1時51分獅子座24度の期間のみです。

※進行法は小曽根秋男先生のスターゲイザーCPS法で見ていますが、ブログ掲載の承諾をとっていないので、ホロスコープの掲載はさくっとホロスコープさんのを利用させていただきます。

持って生まれた性格や人生傾向

東の地平線は蟹座の24度で、気の合う仲間と共に夢や理想を追求するというシンボルです。太陽は獅子座28度「大きな木の枝にとまるたくさんの小鳥」の度数で、こちらも蟹座24度と同様、仲間意識の強い度数です。何か所属しているチームの目標達成の為に様々なアイディアを出せたり、家庭や学校職場などの安定した土台の上で自分の能力を最大限発揮できます。

金星が乙女座5度にあり、これは助けてもらったお礼にお菓子を渡すとか、食卓に花を飾るとか、平凡な日常生活でも楽しいものに変えることができるという度数です。また乙女座の金星は、身だしなみにこだわるので清楚で美しくきれい好きな面があるとか、部屋もすっきり綺麗に片付いているようなイメージですね。ただし、金星の逆行を考慮するなら、愛情問題や金銭の問題で何らかのトラブルの暗示はあります。

この太陽と金星の合に射手座2度の木星と射手座6度の天王星が90度で関わってきますが、2度も6度もやはり集団と関わる度数で、特に火の星座である牡羊座、獅子座、射手座の2度に関しては共通して、まわりを巻き込むインフルエンサー的な意味があります。火星は1ハウスで獅子座の5度にあり、ここは挫折に関わる度数で、松村先生によれば「打たれ強くなるか、卑屈になるかのどちらか」で、打たれ強くなるためには自分の計画を覆されるような体験をしても、何度もチャレンジすることが鍵となってきます。

その火星は4ハウスにある天秤座28度の冥王星、天秤座30度の土星と90度ですが、天秤座28度も自分の考えが覆されるような体験を暗示しています。天秤座の冥王星なので、人間関係の傷つきが0か100かの容赦のなさです。天秤座最後の30度はこれまでの傷付きの体験から悟りを開き、ゆるぎない判断や哲学的な考えを持つことを意味しています。1ハウスの火星と合わせて考えたら、チームの人間関係で傷ついたら、いったん解散してすっきりさせて終わらせる、といったところでしょうか。90度なので突然中断が起こりますし、木星と天王星の120度も加わって、どちらにしろ盛大に人を巻き込んで大改革を起こします。

水星は3ハウス乙女座25度、有終の美の度数です。頭もいい。分なりの納得した終わり方であれば、未練は残さない潔さがあります。

このホロスコープにおける破綻

ではこのホロスコープの破綻具合を見てみましょう。破綻、というとインパクトが強いですが、要は個性的な部分やハードアスペクトのところですね。

月の具合です。

月は西の地平線上山羊座26度にあり、独特な思考回路がある度数で、多くは読書好きで本や趣味にお金をかけているかもしれません。歴史や古いものも好きだったりするので、歴史散策や聖地巡りなどが好きです。一度こうだと決めたら、考えを変えず最後までやりきるでしょう。地に足をつけた生活を望み、隠し事を嫌う誠実な人です。

しかしこの月は7ハウス入り口にあり、母親や年上の女性から強い影響を受けることを意味します。非常に傷つきやすく不安定な状態で、4ハウスにある冥王星と土星の90度に脅かされています。ホロスコープというのは不思議なもので、これはこのまま、この人の母親が出産したときの心理状態としても見ることができます。「家の不安はあるけど待ち望んだ子」という感じでしょうか。多分母親もこの度数の辺りに何らかの星を持っているはずです。母親とその子どもが、お互いがお互い自分を見ている、まるで鏡のような存在です。概して月と冥王星のアスペクトは、いずれも母親ととても縁の深いアスペクトです。

また、月と冥王星の90度は頑張ってやっていても突然無気力になってしまうとか、なかなか心が満たされない状態も表し、月と土星の90度は不満を抑えられずに諦めやすい面を表します。どちらもその対象は主に4ハウスの意味するもの、異常な家庭環境や普通じゃない両親、特に月が関わってきますので、多くは母親に対して表れてくるでしょう。

もう一つ、このホロスコープはすごく極端であることです。

太陽金星の合と月と冥王星土星90度のぎくしゃく、主要な惑星は前半2度~6度までと後半24~30度の度数で全て構成され、若い知性や行動と成熟した知性や行動の同居であり、始めた瞬間に終わりを考える、もしくは終わらせて次へ進むことに希望を抱きます。水の星座が全く無いのであまり情には絡まない性格なのかと思えば、月のストレスはいかほどかと思ったり、地に足をつけた安心安全を求める山羊座の月かと思えば、幸せを手に入れたとたん不安になって手放すような太陽と天王星があったり、非常に「間」の無い極端な印象を受けます。

ではこのホロスコープの持ち主が、実際置かれた環境面はどうだったのでしょうか。

実際に置かれていた状況

幼少期、両親は共働きで一人っ子だったので、親の仕事中は父方祖母に預けられていました。

父親と父方祖母がアルコール依存症で母親に暴力を振るっていました。また、このホロスコープの持ち主も父親と祖母から暴力を振るわれて育ちました。

小学5年生のときに父親が病死。父親を亡くした後は母子家庭となりますが、母親は買い物依存症で借金地獄になり、住んでいたアパートは電気ガス水道が止められ家賃も滞納、借金取りの電話や督促が頻繁にありました。また母親は再婚相手を探そうと露出や化粧が派手になり、家に帰るのが遅くなっていきました。

本人(ホロスコープの持ち主)は小学校、中学校で同級生や先生からいじめや嫌がらせにあい、中学2年生の2学期から不登校。高校への進学は諦めています。その後は新聞配達の仕事をして、お給料の半分を母親の借金に充てて生計を助けておりましたが、母親からはお財布にあったお金までも盗まれていました。

また当時好きだった女性に母親が無言電話をかけていたことがわかりました。さらにこの母親には離婚歴があり、前夫との間に娘が一人いること、これまでの借金の総額などはすべて隠していました。

このホロスコープは山地悠紀夫のものです。

「破綻(という個性)」を自ら「破綻」させる条件はあるのか

これも私の個人的な考察になってしまいますが、破綻させる条件は2つあり、一つは月の状態と、もう一つはプログレスとトランジットで関わってくる惑星のタイミングだと思います。

進行法で時期を追っていきます。

1995年1月12日に逆行のP金星がN太陽と獅子座28度で合、山羊座26度のN月にはT天王星とT海王星が山羊座27度と24度まで接近、T太陽も山羊座の22度にあり、あと4日でN月とT太陽の新月のタイミングです。父親との別れがありました。

2000年7月29日は獅子座5度のN火星に獅子座7度のT太陽が通過、乙女座5度にあるN金星の上を乙女座8度のP月が通過し乙女座14度のP太陽に接近、プログレス新月直前のタイミングです。

プログレスの新月は印象的です。正確には2000年12月28日前後に乙女座14度で起こります。家族や先祖を思い出し、どんな親子関係であったにせよ、自分が今こうして生きているのは先祖や親のおかげだということに気づく度数です。プログレスの新月は約30年に1回起こるので、長く生きていると誰しも2回か3回体験するかと思いますが、新月の直前はまるで出口の見えない暗いトンネルを一人で歩いているようなものです。特に天底付近で起こる新月は、不安に押しつぶされそうになり気がおかしくなりそうです。しかし、出口も自分一人で見つけなければなりません。ただ出口を見つけられたときは「今までの悩みはなんだったんだ」というくらいすっきりして、かなりの解放感が得られます。

この時に山地は、獅子座28度のシンボル「大きな木の枝にとまるたくさんの小鳥」の「大きな木」を倒し、一度目の「破綻」を起こします。深淵を覗き、踏みとどまらずに別世界へ行ってしまったのです。

それはまるで鏡関係にある、水瓶座28度の「のこぎりで切られ倒された木」を思わせます。獅子座28度が集団の中で力を発揮するのなら、水瓶座28度は、関係を断ち切り一人で考え一人で生きていくという度数です。

2001年になると気持ちが上向きになり、すっきりして新しく一歩を踏み出そうとしているはずですが、明らかにこれは倒錯した解放によるものです。

同じような配置が2005年11月17日にも表れます。獅子座28度のN太陽に獅子座27度のP火星が合蠍座24度のP月に蠍座25度のT太陽が合する新月の配置。まわりには蠍座20度のP冥王星、蠍座22度のP土星までいます。

山地の場合、火星が太陽にヒットしてくると、どうしても冥王星土星の合と木星天王星の合とも関わりを持ってしまうので、徹底的に否定した対象(社会なのか家族なのか心の拠り所なのか)には攻撃的になり、盛大に人を巻き込んで大改革していきます。今回は蠍座で起こるので、情念も絡んで何が何でも5年前の状況(出口を見つけてすっきり解放)を手に入れたかったのかもしれません。リバイバル、二度目の「破綻」を起こします。

P金星の逆行が終わるのが2009年7月22日。愛情や金銭の問題が全てクリアになり、迷いがなくなって清々しい雰囲気を感じます。

「破綻」させないためにどうしたらいいか

現実問題として、アルコール依存症や買い物依存症はドーパミンやホルモンによる脳機能の問題なので、本人が本気でやめたいと思わない限り歯止めがきかないですし、不安になる根本的な原因を見つけて取り除かなければ解決しません。傷ついた心や脳をよみがえらせるのは、自分一人だけでは難しく、他者との協力が必要不可欠で、場合によっては法的介入も必要となってきます。

で、ここはホロスコープ考察の記事なので、これを西洋占星術的にどうすればいいかを考えていきたいと思います。これも占う人によって解釈は異なると思います。

原点に立ち返って考えてみると、月というのは0歳から7歳頃までの間に育成された素の部分で無自覚です。大人になってから書き換えようと思ってもなかなか容易なことではありません。

本来であれば書き換えが出来るのは幼児期、もしくは大人になってからでも、繰り返し繰り返しの作業で根気強く記憶を定着させるしかありません。

幼児期の愛着形成に何らかの不足がある場合、親側も子どもに対して愛情表現がうまく出来ていない場合が多いのではないかと思いますが、山地の場合は愛情表現が不器用な母親に加え、追い打ちをかけるように、青年期頃まで祖母からずっと母親の悪口をすり込まれていました。

破綻させないためにどうすればよかったのか。それは、繰り返しの言葉掛けを「大好きだよ」とか「あなたは大切な人なんだよ」とか「ありがとう」「ごめんね」とか「すごいね、がんばったね」にするだけでよかったのです。それは存在をないがしろにせず、認め、抱きしめ、愛するということです。不器用な表現でもいいのです。必ず伝わります。そんなことで?と思うかもしれませんが、これがあれば愛憎相半ばはしても、自ら破綻はしないのではないかと思います。

子どもを育てていくというなら、少なくとも子どもに「生まれてくるべきではなかった」と言わせてはならないのです。

また月と土星の90度は行動をたしなめられる経験、月と冥王星の90度は楽しい思いの途中で突然遮断されるような経験ですが、規制や中断が日常茶飯事に起こっていると、これらのアスペクトは「満足できない」とか「普通じゃ物足りない」などといった意味が出てきます。破綻を緩和するために破綻した状況を扱うというのは、異常な状況でも受け止められるしその方が満足するからです。「山地に居場所があれば」と言う人もいましたが、生まれた時から普通じゃ無い暮らしをしてきた山地にとっては、平穏無事な生活の方が不安を煽るだけだったのかもしれず、ゴト師の仕事は自ら望んだ部分がありそうだと考えます。

そして90度で破れた穴を補修することができるのは、山羊座26度の月が120度になるとき、トランジットやプログレスで牡牛座26度前後に惑星が来たとき、もしくは牡牛座26度前後に星を持つ人が現れたときでしょう。

自分を理解し愛してくれる人、助けてくれる人、支えになる人は、出会うべき時に出会いますし、それはホロスコープにも表れてきます。

順行になったP金星がN太陽と獅子座28度で完全に合になるのは2024年7月27日、今年でした。

まとめ

多くの人が、「山地が一度目の事件を起こしたとき、適切な対処をしていれば二度目の事件は防げたはずだ」と感じていたかもしれません。

しかし、ほころびは一度目の事件よりもっと前から起こっていたことに気づかなければいけません。新月(生まれ直し)のタイミングで、父親と血を伴う異常ともいえる別れ方をしたことは、以降の人生でネイタル、トランジット、プログレスで新月が形成される度に、血と終わりと解放がセットになって繰り返し浮かび上がっていたことでしょう。

誰しも90度のアスペクトの横やりを受けるときは一方の惑星は存在を消します。山地の場合、冥王星と土星のスイッチが入るときに月の存在が消されますが、山地はそれを「山時」と名付けて認識していました。

「あの母親は「山時」の母親であって「山地」の母親ではない」

母親のことも大好きだったということがよくわかる一言です。「母親のことは好きじゃない」というのはきっと水星海王星90度のせいですね。

きっと終わらない地獄があって、終わらせるために元々持っている破綻要素を最悪な方法で出し、法の介入によって止めさせたのかもしれません。

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